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FDは新潟のプロダクトデザイン事務所です。
新潟で30年、工場とものづくりを行ってきました。日頃から燕三条の金属や栃尾の繊維等の工場を訪れ素材や製法を知ることで、 作り手の強みを生かし、使い手が長く使えるデザインを提案しています。産地で一気通貫した製造プロセスを熟知する私たちだからこそ提案できる製品を作っています。

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KITCHEN TOOLS

キッチンツールシリーズは、三条市にあるプリンス工業の高野専務(当時)からデザインコンペに向け「カタチにするから好きにデザインしてほしい」と言われたことをきっかけにデザインした製品を中心に、フッ素加工で黒くしたFD STYLEの原点となる製品群です。

ステンレス製品は錆びにくいという特性上、シルバーの素地のままの製品がほとんどで、キッチンにおいてどれも同じように見えてしまいます。そこで、道具としての機能を表現したフォルムをより美しく見せてくれるマットブラックを採用しました。一方、ステンレス表面に塗装すると「はがれる」というリスクがうまれてしまうことから、「フッ素加工」を選び、安全性にも配慮しています。

2010年、イギリスのライフスタイルカルチャー雑誌『Wallpaper』における「Design of the year」に選ばれ、グッドデザイン賞にも選定されました。初めて自分がデザインしたものを自分で売るという点で手ごたえを感じることができました。近年は、他社からも黒く塗装したステンレス製品が増えつつありますが、些細な事でも新しい価値創造がデザイナーの役割だと考えています。

FD STYLEは、基本的な道具としての性能を持ちながら、世の中に有りそうでない、所有する喜びを感じられる製品を目指しています。

IRON FRYING PAN

フッ素の耐熱温度は260℃。フッ素加工(テフロン加工)のフライパンが焦げ付くようになると、フッ素が「はがれた」と思われがちですが、実際は加熱による劣化が原因です。焦げ付きにくいという理由で、家庭で普及していったフッ素加工でしたが、高温加熱による劣化によって効果が得られないとなると、あらためて鉄フライパンのほうが良いのではないか、と考えました。

鉄フライパン自体は、熱効率も良いし、調理によって鉄分も摂取できます。一方、手入れが面倒くさいという声が多い。使い方や手入れのハードルを下げることができれば、もっと使ってもらうことができると判断し、鉄フライパンの「窒化」に挑戦することにしました。新潟市にあった鉄鋼系メーカー(JFE)の施設の協力を得て、フライパンの窒化に成功しました。「OXYNIT 加工(特許取得)」と名付けたこの加工は鉄表面を硬くし、酸化被膜を発生させることで耐食性を高め、鉄フライパンを使うことに伴う手入れの手間を軽減させてくれます。

製造にあたっては、本来鉄鍋をつくることを専門としていない工場(ツバメテック+プリンス工業)の協力によって、完成させることができました。フライパンの本体(皿の部分)はOXYNIT加工の鉄で、平らな面積が広い形状に設計し、ハンドル金具は熱を伝えにくいステンレス製、持ち手には竹のハンドルを選びました。このハンドルは調理したものを器へ移す動作がしやすいように、丸ではなくあえて四角い断面形状を持たせました。さらに、専用フックも作り、壁掛けにも対応しました。

デザイナーの仕事は、自分がほしいものをただ形にすればいいと思っている人が多いかもしれませんが、それは違います。僕らは地域にたくさんある工場の仕事の価値を高めるためにデザインしています。さらにそれを使ってもらった人の声を受け入れることで、その価値はさらに高まっていきます。

HOT WATER BOTTLE

ステンレスは、錆びに強く保温力が高い金属で、まさに湯たんぽに適した素材です。株式会社ツバメテックが作るステンレス製のコンパクトな湯たんぽは、電気ポットで沸かしたお湯でまかなえる小ぶりなサイズ。金属の冷たい感じをカバーする耐熱シリコン塗装のタイプも展開しています。

「コンパクトなサイズ(φ165mm)の湯たんぽをもっと売りたい」という相談をツバメテックの会長から受けたことをきっかけに、新潟市にあった製糸工場の糸を使い、五泉市のニットメーカーとカバーをつくり、雪国で必要とされる湯たんぽを雪国に拠点を持つメーカーに協力してもらいました。

湯たんぽを通して、燕の金属加工業と五泉の繊維産業、同じ新潟にあっても普段は接点のない産業同士の協業を実現し、あれから10シーズンを超えました。ニット産地もグローバルに大量生産される製品との競争で厳しい状況です。そうした中でも自社ブランド226(つつむ)を展開する五泉市のサイフクと湯たんぽを「包む」カバーをつくりました。無撚糸のコットンを使い、肌触りにこだわり、染色を行わず、素材そのもののナチュラルな風合いを生かした製品です。

MAGIP

永塚製作所は、明治時代から続く、炭や灰、薪にまつわる「火ばさみ」「火おこし」「十能」や草花の植え付け、土の掘り起こしに使う「移植ごて」を製造している歴史ある工場です。当初は、昔ながらの道具であるため、現代においてそれらを使う具体的なシーンがイメージできていませんでした。製造業の経験が全くなく、入社3年目だった能勢専務(当時)から、自社製品を作りたいが、何を作れば良いかまったくわからないという相談を受けました。

当時、渋谷の若者たちを中心にゴミ拾い活動が盛んに行われていたことから、ゴミ拾い専用のトングを作ることを提案しました。それまでのほとんどのゴミ拾いには「火ばさみ」が使われていましたが、火を使うことはないため、安全性を高めるために先端と持ち手にシリコンゴムを用いることで差別化を図りました。

当時の永塚製作所は、ホームセンターや100均向けのOEM製品が中心で、自社製品であっても価格を安くしないと売れないと信じきっていました。とりわけ「1,000円を超えると売れない」と強く言われたことを覚えています。そこで、デザイナーズウィーク東京への参加や、グッドデザイン賞への応募により、全く異なる販路を開拓しました。また、デザイナーズウィーク東京で知りあったスポーツゴミ拾い協会の方にコンタクトを取り、公式トングとして採用してもらいました。こうした展開は、製造業の経験がなくとも、それまでに培った能勢専務のコミュニケーション能力が最大限に活かされた成果だと思っています。

SANSAKU

「三作」酒器シリーズは、「新潟だからこその酒器を」という発想で、ササゲ工業の捧常務(当時)と作りました。僕にとって彼は、作ることを楽しむ人であり、好きでやってる人。誰でも同じなのではなく、彼とやったからこそ辿り着けた作品となりました。

海外のデザイン賞を複数受賞し、捧常務とは、ミュンヘン、パリ、アムステルダムを訪れました。ものづくりを通じて、世界中に自分のアイデアを伝え、異なる食文化でも評価される体験を経て、可能性を広げるためには自分の行動力と協力工場の存在が不可欠であることを知りました。

捧常務とステンレス製品を作り続けていく中、試行錯誤を重ね、微細な粒子によるブラスト加工で陶器のような質感の表現に成功しました。触った感触も素焼きのようです。この成果をきっかけに、アメリカ出身で燕で活動する陶芸作家・Shane Jones氏との共同展示会「異素材の交差点——焼物みたいな金物、金物みたいな焼物——」を開催しました。工芸と工業の境界が溶けだしていることを実感したことが新たな扉を開いた気がしました。

GRIND

挽物がどんなものであり、旋盤技術で何が作られるかイメージできますでしょうか?主にネジなどの部品が作られ、挽物屋だけで最終製品として完成しているものはほとんどありません。そこで、和田挽物の長谷川社長に自社製品の開発を提案しました。

どうせならあまり僕らの産地では作ることがないものを作ってみたいと考え、辿り着いたのがこのペンです。「挽物」をモチーフに、ペンのキャップを切削する前の無垢の角材の形、ボディを旋盤で回して切削した後の円柱の形にしました。金属製で上質な雰囲気を持ち、ペーパーウエイト的に使える転がらないペンとしてデザインしました。

ぺんてるが40年以上製造している「プラマン」という製品のリフィル(替え芯)を使っています。プラスチック製のペン先を持つ万年筆がコンセプトの製品です。見た目にこだわりすぎて、ペン先から作ろうとすると、コストがかかりすぎてしまい、手に取りにくいハイグレードの製品となってしまいます。そこで、「手に届く価格帯で日常使いできる高品質なペン」を挽物屋の技術で実現しました。はじめてクラウドファンディングにも挑戦し、ランディングページをきっかけに和田挽物への仕事の依頼も増えたとのことでした。

DRIP BAG STAND

ドリップバッグを安定してセットできて、注ぐお湯を調整しやすくする道具です。「3か月後の1月末までに3万個作れないか?」という某大手コーヒー関連企業からの依頼でした。デザインや試作だけならまだしも、製品を、しかも3万個です。株主優待としてドリップバッグにセットして配るということで、予算も制限されていますが、難しい条件であるからこそやってみたい気持ちになりました。瞬間的に、僕と同じように考える人の顔が浮かび、すぐに電話すると想像通り「やろて!」と返ってきました。デザインはおろか、図面もまだないのによく言うなと思いますが、30年来の付き合いであるプリンス工業社長はいつも何の迷いもなくそう答えるのです。

5種類のドリップバッグをセットできて、最大φ90mmのマグカップに対応するという条件を伝えられた時点で、可能な加工や形状が思い浮かびました。並行してパッケージもデザインしました。問題は年末年始休業でした。ステンレス製品の場合、金型さえできればプレス加工による形作りまではできますが、仕上げの研磨はどうしても協力工場が必要で、数が3万個もあると簡単には引き受けてもらえません。何とか工場との調整がうまくいき、無事に全数を納品することができました。

WIRE DRIPPER

燕市にあるツバメコーヒー店主からの依頼でつくったステンレスワイヤー製のコーヒードリッパーです。従来の透明プラスチック製のドリッパーに代わるものとして、ステンレスワイヤーで同様に視認性の高いデザインにしました。ドリップする際に、ペーパーフィルターに負荷をかけない最適解として、Sは7本、Lは9本のワイヤーで支える構造としました。

工場でつくられる「工業製品」は製造上の個体差を最小化しなければなりません。個体差を無くすことで個性のない量産品に見えてしまうのではないかと考え、4種のバリエーションを作り、製造上の個体差をあえて残す製品をそれぞれの好みで選択できるような展開にしました。

作るだけではなく、産地から直接的なプレゼンテーションを行ってみようと、東京の下北沢にある商業施設 BONUSTRACKで「工業と工芸のあわい」と題した展示会をツバメコーヒーと鎚起銅器職人・大橋保隆氏との合同で開催しました。これからも試行錯誤は続きます。